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環境価値取引の会計処理の最新動向

企業の持続可能な成長が求められる中、環境価値取引、特に排出量取引や再生可能エネルギー証書の取引が注目されています。2023年に発表された会計制度委員会研究報告第17号「環境価値取引の会計処理に関する研究報告 – 気候変動の課題解決に向けた新たな取引への対応 -」(日本公認会計士協会)と過去の実務対応報告第15号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い」(企業会計基準委員会)をもとに、環境価値取引に関して、主に環境価値の取得者側における会計処理のポイント解説します。

1. 環境価値取引とは

環境価値取引は、温室効果ガスの排出削減や再生可能エネルギーの利用に基づくクレジットや証書を取引するものです。これらの取引には、排出量取引(カーボン・クレジット)や非化石証書を活用した取引が含まれます。取引対象となるクレジットには、J-クレジット制度、二国間クレジット制度、ボランタリークレジットなどがあります​。

2. 排出クレジットの会計処理

「実務対応報告第15号」では、2004年に制定された京都議定書に基づく排出量取引に関する会計処理の取り扱いが定められました。この報告は、排出クレジットを無形の財産的価値として認識し、取得時には資産計上、使用時には費用計上を行うという基本的な枠組みを提供しています。また、クレジットの取得が第三者への売却を想定している場合には、棚卸資産として処理されることも特徴です。

3. クレジットと非化石証書の会計処理

2023年の研究報告では、クレジットと非化石証書を用いた取引の性格や会計処理の違いが議論されており、その概略は以下のとおりです。

  • クレジットは、排出削減や吸収の価値を持つため、資産計上が基本となります。取得時は資産計上され、売却時または使用時に費用として計上されます。
  • 非化石証書は、再生可能エネルギーの利用を証明するもので、取引形態によって適用される会計処理が異なることが想定されています。
    • オンサイトPPA/フィジカルPPA: 証書が主に電力使用に関連する場合は費用として処理されますが、売却目的がある場合には資産として計上されます。
    • バーチャルPPA: バーチャルPPAで発生する差金決済取引について、「非FIT非化石証書の取引対価」と「電力の市場価格の変動に係る精算」の要素に分けて検討する考え方等が示されていますが、一意に定まった会計処理は示されていません。

4. 今後の展望

これらのガイドラインは、IFRSや米国会計基準とも照らし合わせて検討されています。特に、再生可能エネルギーの利用が増加する中で、環境価値取引の透明性と信頼性を高めるため、今後さらに基準の整備が進むことが期待されます。また、バーチャルPPA(電力購入契約)のような新しい取引形態も増加しており、これに伴う会計処理の明確化が求められています。

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